ジャパンハート外務大臣表彰受賞記念-吉岡代表と樋口大使の懇談-
  • ミャンマーで活動する特定非営利活動法人 ジャパンハートは「技術協力分野における国際協力の推進」が評価され、平成26年度外務大臣表彰を受賞することが決まりました。ジャパンハートは、ミャンマーやその他の近隣諸国を中心に「医療の届かないところに医療を届ける」を方針に活動している国際医療ボランティア団体です。ミャンマーでの活動はマンダレーから車で1時間ほどにあるザガイン地区ワッチェ慈善病院での医療・診療、カチン州ミッチーナなどの医療過疎地での手術ミッションの他、子どもの養育施設ドリームトレインの運営、視覚障害者自立支援など多岐にわたります。

  • ※外務大臣表彰とは、「国際関係の様々な分野で活躍し、我が国と諸外国との友好親善関係の増進に多大な貢献をしている中で、特に顕著な功績のあった個人および団体に与えられる賞」で、平成26年度は108名,30団体が選ばれました。
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_001109.html
    • 7月24日、樋口大使は、ジャパンハート吉岡秀人(ひでと)代表、テイン・ゾー・ミャンマー駐在事務所長、河野(こうの)朋子プロジェクト・ディレクターを公邸に招き、外務大臣表彰受賞のお祝いを述べました。小児外科医である吉岡先生から、ジャパンハートでの活動や、今後の目標などを伺いましたので、ご紹介いたします。

    • 【医療の原点を感じた】
      年間425人もの多くの日本人医療関係者が休暇をとって、ミャンマーなどの医療が十分ではない国でのジャパンハートの活動に参加しています。どうして、彼らはこのような活動をするのでしょうか。
      吉岡先生はこう語ります。「日本は医療がビジネスになっています。しかし、ミャンマーでの医療活動は、本当に医療の必要な人に対するものです。ミャンマーで活動した多くの医療者達は、日本とミャンマーでの医療活動のかい離に気付き、『医療の原点を感じた』と言って帰って行く人が多いです。また、日本の医療者は二極化していて、このような海外での医療活動を自分も是非やりたいという人と、なぜそのような活動をやりたいのか分からない、という人に分かれます。」

    • 【現場にトップが行く】
       吉岡先生は、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど海外で医療活動を行いながら、日本でも精力的に講演活動をされており、まさに世界を飛び回っていらっしゃいます。そんなご多忙な中で、それでも海外の医療現場に足を運ばれる理由はなんでしょうか。「再現性がないと組織は伸びない、と考えています。今はスタッフの能力が上がって、私でなくても手術ができるようになりました。その一方で、ソーシャルメディアの発展により、年齢や経験に関係なく誰もが簡単にイノベーションを起こせるようになりました。TED(米国発祥の大規模な世界的講演会)のスピーチでも有名になった15歳の少年(Jack Andraka氏:叔父が膵臓がんで亡くなったことをきっかけに、インターネットを通じて研究を行い、膵臓がんの画期的な検査手法を開発)は、その具体例と言えるでしょう。今までの常識が、明日には変わるかもしれない、その危機感をいつも感じています。また、私は顧客のニーズは現場でのトライ&エラーを通じてしか分からないと思います。つまり、現場に行かなければ大きなイノベーションは起きません。現場の中から作り出したコンセプトや仕組みなどのアイディアを世の中にぶつけていきたい、そう思います。」

    • 【メインのドナーは日本人】
       海外での医療活動を行っていると、ドナーは「その地域の人々」であると考えがちですが、吉岡先生は、メインのドナーは日本人であるとおっしゃいます。なぜでしょうか。「ジャパンハートの活動の原点は、ミャンマーで戦争中に亡くなった日本の遺族会からの依頼です。したがって、どのような形で活動の成果を日本に還元するか、といつも考えています。海外で長期医療研修を行う医療者は、日本の僻地医療活動を6か月間行った後、ミャンマーでの医療活動を6か月間行う仕組みにしています。(日本とミャンマーといったように)経験の振れ幅を大きくすればするほど、成長できると思っています。日本の僻地医療を経験することで、日本の医療の足りない部分に気付くことができます。よって、①日本の若者をトレーニングすること、②日本の医療の足りない部分に気付くこと、のふたつを通じて、日本社会に還元できる仕組みを作っています。」
      これらの吉岡先生のお話を樋口大使は大変興味深く聞き、「ミャンマーのような色々な制度が未整備なところでは、現場で医療を始めてから、制度が後から付いていくものなのかもしれませんね。」と述べました。吉岡先生は、「制度ももちろん大切ですが、その整備には時間がかかるので、その間に病気の子どもは亡くなっていくという現状があります。日本政府は制度づくりを行い、我々は現場での活動を続けていく、その両方が必要ですね。」と答えました。