ミャンマーの政治情勢に関する最近の動き
国軍とカチン独立軍との戦闘・ミャンマーの国民和解に向けた日本の支援
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(1)ミャンマーには130以上の民族が居住しているとされ、1948年の独立以来、一部の少数民族は民族の平等や自治権を求めて武装闘争を行ってきました。
(2)2011年3月、民政移管によって発足した現政権は,同年8月、武装活動を継続している少数民族武装組織に対して和平交渉に応じるよう求め、各少数民族武装勢力との間で和平実現に向けた協議が順次開始されました。新政権は,国内和平を最重要課題の一つと位置づけて一貫して積極的な取り組みを進めてきており,これまでに主要な11の少数民族武装組織のうちカチン独立軍/カチン独立機構(KIA/KIO)を除く10の組織との間で停戦合意が実現しています。
(3)KIAについては、2011年6月、国軍との間で本格的な戦闘が発生し、和平交渉の努力が鋭意続けられていますが、現在まで停戦合意は実現しておらず戦闘が散発的に発生しています。また、この戦闘によって住民数万人が国内外で避難民として厳しい生活を強いられており、国際社会からの人道支援も十分にアクセスできない状況が続いているため、一刻も早い停戦の実現と避難民への支援実施が必要となっています。
(4)こうした中、2月19日、笹川陽平日本財団会長(ミャンマー少数民族福祉向上大使)が「ミャンマー国民和解に関し、関係国政府等と交渉するための日本政府代表」に任命することが閣議決定されました。日本財団グループは、長年にわたりミャンマーにおいて保健衛生、障害者支援及び教育等多くの分野で様々な支援を実施してきており、昨年12月よりカチン州を含む国内各地の少数民族地域において、国内避難民約100万人に対して合計約300万米ドルの食糧、医薬品等の人道的緊急援助を実施しました。今後もミャンマーの少数民族問題の解決に向けて日本政府と連携を取りながら支援を進めていきます。
(1)2012年5月、ラカイン州において仏教徒女性1人がイスラム教徒に殺害された事件をきっかけとして、6月3日に同州タウンゴウ地区にてラカイン族住民がイスラム教徒10人を殺害する事件が発生。6月8日には同州マウンドー地区においてベンガル系イスラム教徒による暴動で仏教徒の家屋が放火される等して対立が拡大し、双方合わせて死者約200名、負傷者100名以上、家屋等約5000棟が破壊される甚大な被害が発生しました。6月10日にはラカイン州において緊急事態宣言が発出され、双方合わせて約4万人が同州内にある約40ヵ所のキャンプに避難する事態となりました。
(2)警察及び国軍による治安回復に向けた活動により、現地情勢は安定を維持していま
すが、住民の地元への帰還や復興への取組みは円滑には進んでおらず、多くの避難民が引
き続き避難所で生活しています。
(3)2012年8月、一連の暴動の実情及び原因等を調査するために、各政党関係者や88年世代学生グループ等幅広いメンバーで構成される調査委員会が設置されました。同年11月には同委員会より大統領に対して中間報告書が提出されています(内容は非公表)。本年3月31日には最終報告書が提出される予定になっています。
レパダウン銅山プロジェクト・サイトにおける住民の抗議活動
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(1)ミャンマー連邦持株会社(Union Myanmar Economic Holding Limited(UMEHL),国軍傘下の企業)と中国企業との合弁事業として操業されてきたレバダウン銅山プロジェクトは、2012年6月から地元住民及び僧侶が土地収用の補償と環境汚染を訴えるデモを開始し、その後、本プロジェクトの完全閉鎖を求めるまでに要求を強め、デモの規模も拡大していました。
(2)治安当局は、住民側に対して、同年11月2日までにデモ・キャンプを撤去するよう要請しましたが、住民側がこれを拒否したことから、11月29日、デモを強制排除し、その際、僧侶、住民側に多数の負傷者が発生しました。この事態を受けて、12月初旬から、ヤンゴン、マンダレー等において強制排除措置の不当性等を訴える抗議デモが頻発したため、ミン・マウン前宗教大臣及びフラ・トゥン大統領府付大臣が政府を代表して負傷した僧侶に対して謝罪しました。その後、住民側は本格的なデモを自粛していますが、一部は小規模なデモを継続する等、現地の状況は完全には沈静化していません。
(3)同年12月3日,政府はアウン・サン・スー・チー氏を委員長として連邦議会議員、関係省庁幹部及び地元住民等合計16名で構成される調査委員会を設置しました。同委員会は、現地視察を行うとともに住民、関連企業等関係者からの聞き取り調査を実施しており、本年3月11日には同委員会より大統領に対して最終報告書が提出されました。同報告書では、多くの改善策の実施が必要としながらも、現在までに本プロジェクトによって自然環境が大きく損なわれたという事実は見つかっていないとした上で国家と地元住民の経済的利益、将来世代の利益を確保するために事業計画を策定した上で、本プロジェクトを継続していくことが適切と提言されています。
(4)今後は、政府として本報告書において示された改善策を迅速に実施していけるかどうか、アウン・サン・スー・チー氏に対してさえも強い反発を示した地元住民から理解を得ていくことができるか等が注目されます。
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